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ごもくば

触れたものの感想を綴ります。

パッセンジャー 感想(ネタバレあり)

パッセンジャー

2017/3/24 公開  モルテン・ティルドゥム監督 ジョン・スペイツ脚本 アメリカ

 クリス・プラットの瞳に光がないシーンが多く、ジム・プレストンという男は内面に底冷えするような狂気を持ったキャラクターなのだと思えた。この映画のクリス・プラットはふとしたシーンで息をのむような美しさを放っている。

 ラブロマンスという謳い文句だが、この結末をきれいな終わり方、ハッピーエンドと捉えられることは難しい。まず予告にだまされた。偶然同じ不幸に見舞われた二人の男女が心を通わせ、困難を乗り越えようとする物語なのだろうと思っていたが、そうではなかった。孤独に耐えきれなかったジムが一目惚れしたオーロラ・レーンを起こしたことは大きな罪だ。たとえそれが結果的に船の爆発を防いだとしても、この事実は変わらない。彼女はそのことを知ったとき、怒りと同時に恐怖も覚えただろう。「船から降りられない」ということは、あの優れた知識と体力を持った大男から逃げられないということだ。

 ジムは最初に目覚めてから最後まで、荒れはすれどパニックは起こさなかった。頭のどこかは必ず冷静で、自分の行いがオーロラに知れたときも落ち着いている。そして過去のことは語らない。家族構成も、地球で何をしていたのかも教えてくれない。そのことがジムの人間性を不透明なものにしており、不安を感じさせる要因にもなっている。対するオーロラはパニックにもなるし、断ち切った人間関係への未練もみえる。真人間とわかる彼女の不幸ばかりが目立つ。そして最後にオーロラは冬眠のチャンスを得たにも関わらずその選択をしなかった。もはや吊り橋効果、およびストックホルム症候群だとしか考えられない。しかし仮に冬眠を選んだとしても、ジムは起きている。毎日会いに来るとさえ言っている。いつでも彼女を目覚めさせることは可能なのだ。どう転んでも影がつきまとう結末になるだろう。

 カップルの観客が多くみられたが、果たして鑑賞後の感想はいかなるものだっただろうか。